弓道で弓のキロ数を上げるタイミングは?錬士六段が考える弓力の目安と上げ方

弓の画像です。 弓道

「今の弓が少し軽く感じるようになってきた」

「そろそろ弓のキロ数を上げた方がいいのだろうか?」

弓道を続けていると、一度は悩むのが弓力を上げるタイミングです。

私自身、学生時代に伸寸15kg程度から17kg台まで弓力を上げ、それ以降はおおむね17kg前後の弓を使ってきました。

現在は弓道錬士六段。大学弓道部で約10年間コーチをした経験もあります。

長く弓を引いてきた現在の結論は、

「強い弓に挑戦する価値はある。ただし、その弓力で普段の射数をこなし、安定した射を継続できることの方が重要」

ということです。

また、少し強い弓を一度引いて「重い」と感じただけで、強すぎると判断する必要もないと思っています。

身体が新しい弓力に慣れる時間も必要だからです。

この記事では、自分自身が弓力を上げてきた経験と、大学弓道部で選手を見てきた経験から、弓のキロ数を上げるタイミング、適正な弓力の考え方、具体的な上げ方についてまとめます。

この記事を書いた人|ぐっちょん
弓道歴約30年・錬士六段。大学弓道部で約10年間コーチを経験。現在は伸寸17kg前後の直心バンブーを使用しています。

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私は伸寸17kg前後を長く使っています

弓の画像です。

現在、主に使用しているのは伸寸17kg程度の直心バンブーです。

以前は竹弓をメインに使っていましたが、弓道を再開したばかりということもあり、現在はグラス弓を中心に使用しています。

学生時代には伸寸15kg程度から17kg台へ弓力を上げました。

当時使っていたのは直心IIカーボン。その後、直心IIIバンブーなどへ移行し、それ以降はおおむね17kg前後の弓を使っています。

その経験からいうと、私は1kg上げたからといって、突然まったく引けなくなるほど感覚が変わるとは限らないと感じています。

もちろん最初は強く感じます。

ただ、そこで考えたいのが身体の慣れです。

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キロ数を上げた直後だけで判断しない

例えば15kgから16kgへ弓力を上げたとします。

最初に引けば、

「重い」

「強い」

と感じるのは、ある意味当然です。

今までとは違う負荷が身体にかかるからです。

しかし、人間の身体は新しい負荷に少しずつ適応していきます。

そのため私は、数射引いただけで、

「この弓は強すぎる」

と判断する必要はないと考えています。

例えば1週間程度使ってみる。

その間に身体が弓力に慣れ、そのうえで射形が安定してくるのであれば、その弓力を継続してもいいでしょう。

逆に、ある程度使って身体が慣れてきても、

  • 射形が崩れる
  • 普段の射数をこなせない
  • 会が保てなくなる
  • 肩などに痛みが出る

のであれば、現在の自分には強すぎる可能性があります。

つまり見るべきなのは、

「最初に強く感じるか」ではなく、「身体が慣れたあとにその弓を使い切れるか」

だと思います。

キロ上げの目安は「普段の射数を最後まで引けるか」

では、何をもって弓力に慣れたと判断するのか。

私は普段の練習量をこなせることを一つの目安にしています。

例えば普段、一回の稽古で100射する人なら、

その弓で100射を引き切ったときにも、射形や的中が大きく崩れていないか。

ここを見ます。

最初の10射だけきれいに引けても、70射、80射と進むにつれて肩が上がったり、手先で引いたりするようになってしまうのであれば、まだその弓を十分に使い切れているとは言いにくいでしょう。

反対に、普段の矢数をこなしても射形と的中を安定して維持できる。

そこまで来れば、その弓力に身体が一つ適応したと考えていいと思います。

そして、その弓に余裕を感じるようになってきたら、さらに次の弓力へ挑戦する。

私はこの繰り返しが、弓力を上げていく基本だと考えています。

弓力を上げるなら0.5~1kg程度ずつ

弓力を上げるときに、いきなり大幅に上げる必要はありません。

環境が許すのであれば、0.5~1kg程度ずつ上げていくのがいいと思います。

例えば、

15kg

15.5kg

16kg

という具合です。

少し負荷を増やし、その環境で普段の稽古をする。

身体が適応したら、また少し負荷を増やす。

これを繰り返します。

弓を引くために必要な筋力をつけるという意味でも、私はこの方法が有効だと感じています。

もちろん、0.5kg刻みで弓を何張りも購入するのは現実的ではありません。

学校や道場、連盟などで複数の弓を借りられる環境があるなら、それを利用するのがおすすめです。

実際に一定期間引いてみて、自分が使う弓力がある程度定まってから自分の弓を購入しても遅くありません。

素引きだけでなく、実際に少し強い弓を使って身体を慣らす

弓を強くするために、素引きをする方法もあります。

私も素引き自体は有効だと思っています。

ただし、普段より強い弓を数回だけ素引きして終わりでは、身体がその負荷に十分適応するところまではなかなかいきません。

弓力を上げることが目的なら、

少し強い弓を使い、その弓で実際の稽古を継続する。

そして、その環境に身体を慣らしていく。

私はこの方法を重視しています。

弓力を上げるための身体づくりについては、別の記事で「弓道に筋トレは必要か?」についても書いているので、興味がある方はそちらも参考にしてみてください。

昔は「ある程度強い弓を引いた方がいい」と考えていた

私は以前から、ある程度強い弓を引くことにはメリットがあると考えていました。

適度な負荷があることで身体の使い方が決まりやすく、射の変化にも気付きやすくなるからです。

また、弓力が上がれば矢勢も出やすくなります。

弓の張力をうまく使うことができれば、離れも切れて見えますし、弦音も良くなりやすい

射の見栄えという意味でも、ある程度の弓力に挑戦する価値はあると思います。

今でも、この考え自体を否定しているわけではありません。

ただ、錬士六段となった現在は、昔よりも重要視するものが一つ増えました。

それが、

身体を壊さないこと

です。

今は「強さ」より継続して同じ射ができることを重視しています

強い弓を引けても、肩や肘などを痛めて弓を引けなくなってしまえば意味がありません。

また、強い弓を引くために射形そのものが変わってしまうのも本末転倒です。

そのため現在は、

自分の体力に合った弓力で、継続して同じ射形を出せるか

を重視しています。

強い弓を引くことそのものを目的にするのではなく、

「現在の射を維持したまま、もう少し強い弓を扱えるか」

と考える。

この順番が大切だと思います。

また、強い弓を腕力だけで処理するのではなく、自分の骨格に合った無理のない位置で弓を受けることも重要です。

この考えについては、以前「骨で引くとはどういうことか」という記事にも書いています。

弓が弱すぎても射が崩れることがある

一方で、強すぎる弓だけが問題とも限りません。

経験を積んで身体が強くなってくると、今度は弓が弱すぎることで引きにくくなる場合があります。

例えば、以前より簡単に大きく引けるようになり、必要以上に引尺を取ってしまう。

あるいは弓の引き応えがなくなり、会や離れの感覚が安定しない。

こうなってくると、弓力を少し上げることで射が安定することもあります。

つまり、

「弱い弓なら安全だから、ずっと同じ弓でいい」

とも限りません。

身体や射の成長に合わせて、弓力も見直していく必要があります。

初心者は自分だけでキロアップを判断しない

初心者については、少し考え方が違います。

初心者は射形の変数が非常に多いからです。

肩の位置、胴造り、取り懸け、打起し、大三、引分け、会など、まだ射そのものが大きく変化する段階です。

その状態で、

「今の弓が軽く感じるから強くしよう」

と本人だけで判断するのは難しいと思います。

初心者の場合は、指導者に実際の射を見てもらって判断してもらうのがいいでしょう。

一方で、初心者だからといって、いつまでも極端に弱い弓を引き続ければいいとも思いません。

身体が慣れて余裕が出てくれば、少しずつ弓力を上げることで、弓を引くための身体も作られていきます。

重要なのは、

射形の変数がある程度少なくなってきているか

ということです。

射がある程度まとまり、指導者から見ても現在の弓に明らかな余裕が出ている。

その段階なら、次の弓力へ進むことを検討していいでしょう。

経験者がキロ数を上げるタイミング

経験者の場合は、自分の射や身体の状態をある程度判断できるようになっています。

そのため、

現在の弓に引き応えがなくなってきた

という感覚も、一つの判断材料になります。

例えば、弓が弱く感じることで必要以上に引尺を取るようになってしまったり、会や離れの感覚が安定しなくなったりする。

そういう状態になってきたら、少し強い弓を試してみる価値があります。

ただし、ここでも一度引けたからといってすぐに変更するのではなく、一定期間使ってみます。

そのうえで普段の練習量をこなしても射が崩れないのであれば、キロアップを検討していいでしょう。

適正な弓力は何kgなのか?

「結局、何kgくらいの弓を引けばいいのか?」

これはよく聞かれる質問ですが、絶対的な答えはありません。

体格、筋力、年齢、練習量、経験、引尺などによって変わるからです。

そのうえで、あくまで私自身の経験として言えば、経験を積んだ成人男性なら17kg前後は、矢勢と扱いやすさのバランスを取りやすい弓力の一つだと感じています。

ただし、

「成人男性なら17kgを引くべき」

という意味ではありません。

15kgで非常に安定した射ができる人が、無理をして17kgにする必要はないでしょう。

女性については、大学弓道部で約10年間コーチをした経験から、12kg前後でも十分に弓道はできますし、そのあたりを扱う選手も多く見てきました。

しかし、こちらも個人差はかなりあります。

実際、私が見てきた中でも非常によく的中していた後輩は、並寸15kgを引いていました。

結局のところ、男性・女性という分類以上に、

その人の身体と射に合っているか

が重要なのだと思います。

弓力を上げてもいいかチェックしてみる

最後に、私ならどんな状態でキロアップを考えるかをまとめます。

キロアップを検討してもいい状態

  • 現在の弓で引き応えがかなり少なくなった
  • 普段の射数を最後まで安定して引ける
  • 射形が安定している
  • 的中も大きく崩れない
  • 会や離れで弓が弱すぎる感覚がある
  • 少し強い弓を一定期間使っても身体が適応する

逆に、次のような場合はまだ急がなくてもいいと思います。

まだキロ数を上げない方がいい状態

  • 強い弓にすると肩が上がる
  • 手先で引かなければ引けない
  • 普段の射数をこなすと射が崩れる
  • 会を保てなくなる
  • 身体に痛みが出る
  • 現在の射形そのものが大きく変化している

この状態なら、キロ数を追うよりも、まず現在の弓で射を整える方を優先します。

まとめ|強い弓ではなく「使い切れる弓」を選ぶ

弓力を上げること自体は悪いことではありません。

むしろ身体が成長し、射が安定してきたのであれば、少し強い弓へ挑戦していく価値はあります。

矢勢、弦音、離れなど、ある程度の弓力があることで得られるメリットもあります。

ただし、

強い弓を引けること=弓道が上手いこと

ではありません。

私自身、学生時代から17kg前後の弓を長く使ってきましたが、現在は昔以上に「その弓を継続して使い切れるか」を重視しています。

一度引いて重いからダメ。

一度引けたから大丈夫。

どちらでもありません。

少しずつ弓力を上げ、身体を慣らし、普段の射数をこなしても射形と的中を維持できるかを見る。

そして余裕が出てきたら、また次へ挑戦する。

自分が安定して使い切れる範囲で、少しずつ強い弓に挑戦する。

これが、長く弓を引いてきた私が現在考えている弓のキロ数の上げ方です。

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ぐっちょん

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